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光電効果・コンプトン散乱・電子対生成

医療で使用する光子線のエネルギー範囲は、数keVから十数MeVです。このエネルギー領域による光子と自由電子の相互作用は、量子電磁力学によって極めて正確に調べることができます。しかしながら、物質中の電子は物質を構成する原子の中に存在するため、その電子状態(束縛電子)がどこまで正確に得られているかによって、計算される相互作用の精度も変わってきます。本研究では、現在光電効果・コンプトン散乱・電子対生成の計算に使われている電子状態のよりも精度の高い計算を実行し、これらの反応断面積の新しいデータベースを構築することを目指します。

極低エネルギー光子と物質の相互作用

光電効果・コンプトン散乱・電子対生成と同じく、電子の状態をいかに正確に求めるかが重要です。他方、上記との大きな違いは、考えている光子のエネルギー領域です。数keV以上の光子と相互作用する物質中の電子の寄与は、内殻電子が主となります。しかし、もっと低いエネルギーの光子では、より外殻にある電子の寄与が増してきます。そのため、原子単体で存在するという仮定のもとで電子状態を計算することはもはやできなくなり、化合物や結晶構造の中で電子状態を求めることが必要になります(反応計算のためには、その励起状態も必要です)。本研究では、そのような電子状態を求める方法を模索します。

光核反応

放射線治療では、十数MeVの光子を利用することもあります。そのような光子を利用した時には、リニアックの一部が放射化します。放射化は、主にリニアックのターゲット周辺で使われている比較的重い元素と光子の相互作用が起源となって生じます。粒子の輸送計算で使われるモンテカルロ法でも放射化に対応した計算コードがありますが、その中で使われている光核反応モデルの精度は高くありません。本研究では、光核反応モデルの改善を目指していきたいと考えています。

粒子線と原子核との反応

X線治療の線量計算では原子核との相互作用を考慮するほどの精度は求められていませんが、粒子線治療では話が異なります。陽子線や炭素線を用いた治療では、それらと原子核との反応が誘引する線量を無視することはできません。また、ホウ素中性子捕獲療法における線量評価にも、中性子やホウ素から生じるα線、リチウム原子核と物質の相互作用に原子核反応の知識は欠かせません。本研究では、粒子線治療で必要となる原子核反応の計算を実行し、データベースを蓄積していきます。

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